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名大生の一日

多様性理解促進に関するシンポジウムを通じて

みなさん、こんにちは。小川高広です。今日は名古屋大学東山キャンパスの坂田・平田ホールで以前開催された、多様性理解促進に関するシンポジウムについてお伝えします。主なテーマは最近話題の「多様性(ダイバーシティ)」でした。どのような話が聞けるのか気になり、参加してみました。

 

私は以前、名古屋大学で多様性関連の講義を受け、その中のマイノリティやジェンダーなどについて勉強しました。その講義がきっかけで、「多様性」が主なテーマである今回のシンポジウムに興味を持ちました。ところで、みなさんはダイバーシティ、マイノリティ、ジェンダーなどの言葉を聞いたことがありますか。日本語ではそれぞれ「多様性」「(社会的)少数派」「社会的・心理的な性別」と訳されることが多いですが、日本語にするとわかりにくくなるという指摘もあり、カタカナのままで使われることもあります。いずれも差別や偏見など社会の問題と関係しているため、最近では政府や民間企業などでその問題の解決に向けた取り組みが行われています。私が受講した講義では、それぞれの分野に詳しい先生を迎え、先生から現状や課題についてお話しをいただきました。その後、グループに分かれ、その解決方法や理解するためにはどうすればいいのかなどについて、学生同士で話し合いました。みんなで話し合うことで、今まで気が付かなかった視点から、現代社会が抱える問題について、より深く学ぶことができました。(名大では学生同士が積極的に話し合う機会を講義の中に設けたり、最先端の科学技術に関する講義や、現代の社会問題に関する内容を含んだ時代の今に焦点をあてた講義など、様々な講義があります。これは名古屋大学の大きな魅力だと思います。)

 

高校生の皆さんはシンポジウムに参加した経験はありますか。シンポジウムとはどのようなものでしょうか。講義のスタイルと似ているのでしょうか。大学の講義では先生の話しを聞き、自らの知識を深めていくことの他、学んだことを土台にみんなで話し合い、意見をまとめ発表し合いながら、さらに議論を深めていくというようなスタイルが一般的です。シンポジウムも先生の話しを聞く点では、講義と似ているところがあります。しかし、それだけではありません。シンポジウムによって、そのスタイルは様々です。今回は発表者の方々の発表をみんなで聞き、その後に、発表内容について質問のやり取りが行われました。そしてそれをもとに、最後にみんなから出された意見をまとめながら、みんなで話し合うというスタイルでした。

 

今回の発表ではマイノリティ(社会的少数派)と言われている障害者や外国人、LBGTなどの人々に対し、大学や企業がどのようにかかわり、周りの理解を進めているのかについて、それぞれの取り組みが紹介されました。それと同時に障害者や外国人など様々な背景を持つ人々が、社会で一緒に生きていく「多様性」を重視した社会について、全員で意見交換が行われました。今回の発表参加者は名古屋大学、京都大学、IBM、中部電力などの教職員の方でした。

発表のうち、名古屋大学の取り組みについて二つ紹介します。一つは障害を持つ学生への学習サポート活動と、もう一つは障害を持つ人々の雇用の促進についてでした。

 

名大ではマイノリティである聴覚障害、身体障害などを持った学生をサポートするために障害学生支援室を設置しています。支援室では職員の方々とサポーター学生が協力し合い、サポートが必要な障害を持った学生に対し、学習サポート活動を行っています。

具体的なサポート活動は、キョプショニングと図書館における資料収集です。キョプショニングとは話し手の声を文字におこし、視覚化していく作業のことを言います。講義の内容を聞き取ることが困難な聴覚障害の学生を対象に、先生が話している内容をパソコン画面を通じて伝えています。このサポート自体の仕組みはシンプルで、講義室の後ろに控えているサポート学生が先生の声を聞き、聞き取った言葉をそのまま入力用パソコンにタイピング・入力していきます。聴覚に障害のある学生は手元にある表示用のパソコン画面に、視覚化(文字化)された先生の話す内容をリアルタイムで確認できるという仕組みです。なぜ人の手でやっているのか、音声認識ソフトを使わないのか、疑問に思われるかもしれませんが、残念ながら音声認識ソフトでは、人間が手で打つよりも精度が落ちてしまいます。特に日本語は文脈を考える必要がある同音異義語が多く、ソフトではまだまだそこまで対応しきれていません。音声の認識精度が甘いために、文章として正確な意味が伝わらないことが多いのです。みなさんも、もしかすると試したことがあるかもしれませんが、スマートフォンにも音声認識ソフトがあります。簡単な単語なら、こちらが考え、思っている単語を表示してくれるかもしれません。しかし、難しいものになると、こちらの思いや考えている単語とは違う、思いがけないものが出てくることもあると思います。大学の講義では専門用語も多く、難しい単語もたくさん出てきます。そのために、やはり人間が聞き取ってパソコンに入力していく、アナログな方法に頼っているのが現状です。もちろん、今後精度の高い音声認識ソフトができるでしょうから、その時は人間が入力しなくてもよくなると思います。

次に、図書館における資料収集の支援についてです。このサポートでは車いすを使用している学生に対し、図書館での資料収集をサポートします。車いすを利用していると本棚の上部にある書籍を取ることが出来ません。サポートする学生が本人の代わりに、本を取ってあげるのです。車いすに乗っていない私たちにとっては、本を取ってあげる「だけ」だと思われるかもしれません。しかし、本棚に手が届かない車いすの学生にとっては、大きな問題です。私たちにとっては些細なことかもしれませんが、車いすの学生にとっては日々の学習を支えてくれる大事なサポートとなっています。

ここまでは障害を持つ学生に対する学習活動に関係する支援について触れてきましたが、名大では障害を持つ人々を雇用する取り組みも行っていて、現在約30名の作業員の方々と10名前後の指導員の方々が活躍されているそうです。平成23年1月に業務支援室が設置され、学内の清掃、除草作業、図書の整理整頓、学内で使用する冊子や印刷物の製本や印刷など様々な業務を担当されています。私たちの知らないところで、大学の運営を支える縁の下の力持ちとして活躍されています。

 

名古屋大学で、これらのサポートを受けるには書類の提出や面談など、大学による所定の審査があります。学習に直接関係しない、例えば通学など日常生活における活動は支援の範囲に含まれませんが、様々な学生を受け入れていることは、注目すべき点だと思います。多様性の考えを重んじ、誰でも学習や研究ができる機会を提供している体制があることは、非常に重要なことです。全国の大学でも同様の取り組みが広がりつつあるようですが、まだまだ改善の余地があるそうです。これからも名大のような取り組みが全国の大学に拡大し、改善されつつよりよい形になって欲しいと思います。

 

最後にシンポジウムで行われた講演について触れたいと思います。この特別講演では名古屋大学OBであり、日本アイ・ビー・エム(以下IBM)の橋本孝之副会長が登壇されました。今回のシンポジウムのテーマの一つである「多様性」について、橋本副会長の経験や会社の取り組みについて話されました。

 橋本副会長は工学部のOBです。名古屋大学を1978年に卒業し、日本IBMに入社されました。その後、アメリカIBMへの出向や日本IBM代表取締役社長を経て、現在副会長として活躍されています。その一方で、日本経団連や経済同友会の要職、政府の社会保障改革委員会委員長の他、名古屋大学の経営協議会委員も歴任された方です。名大の大先輩の講演とあって、多くの方々が耳を傾けていました。私も興味深くその話しを聞いていました。橋本副会長は国際的な企業にいる自身の経験から、多様性やコミュニケーションがとても大事とおっしゃていました。現代は社会が目まぐるしく変化し、複雑化しています。そのため、様々なアイデアや考え方がなければ、社会に対応できないとおっしゃっていました。また、世の中が便利になり人工知能などが普及しても、やはり人間同士のコミュニケーションはなくならない、世界でビジネスを行っているため、様々な人々と理解していくためには黙っていては何も伝わらないことなど、自身の経験を踏まえ話されていました。そして、日々変化する社会で対応していくためには、今までのやり方を疑うようなチャレンジ精神を持ち続けることや、時代に合わせて個々が持っているスキルを磨くことも大切だとおっしゃいました。チャレンジ精神や人間が持っているスキルは人工知能では再現できないものも多く、人間にしかない財産であると橋本副会長は指摘されました。

 講演の最後には橋本副会長から学生や若い参加者へメッセージが ありました。「グローバル化の社会が進む現代では外国の人をはじめ、性別や年齢など関係なく、多様な価値観を持った人たちと仕事をし、共に過ごす機会が増えます。円滑にみんなが共存するには、お互いを理解し、認め合うことが鍵となります。そのためには、日頃からコミュニケーション能力を磨くことが重要です。多様な価値観を理解し、認め合うこと、そのことを忘れず過ごしてください」と、多様性への理解やコミュニケーション能力の重要性を述べられ、締めくくりました。

 

今回のシンポジウムでは今まで知らなかった取り組みなどを聞くことができ、大変有意義でした。社会には多くの困難を抱えている人々がいます。大学で学んだことを活用し、少しでもよりよい社会に貢献できる人材になりたいと思います。また、受験生のみなさんの中には、自分の障害などで大学生活を不安に思っている人がいるかもしれません。しかし、名古屋大学では皆さんが安心して勉強や研究に取り組めるように支援体制が構築されています。そして、大学には何か問題があれば、話を聞いてくれる人が必ずいます。大学にも高校で言う「保健室」のような部屋がありますし、名古屋大学には学生相談総合センターなどもあります。教職員の方々はいつでも気軽に相談に応じてくれます。安心して、大学に進んでください。

(上の写真/橋本副会長を囲んで)

 

このシンポジウムを通じて、大学や企業では様々な取り組みが行われていることを知りました。みなさんの周りにも障害を持った友人や、外国人の友人がいるかもしれません。社会は様々な人々が集まって生活しています。みんなにとって、住みよい社会になるためには、私たちはまずそのことを知り、学び、理解し、困っている人たちがいればサポートしていかなければなりません。今回のシンポジウムではまだまだ知らなかったことを学ぶいい機会でした。

名古屋大学では講義以外にも、今回のようなシンポジウムがたくさん開催されていて、自分の専門分野以外のことも学べる機会が多く用意されています。もしみなさんが名古屋大学に入ったら、普段の講義だけでなくシンポジウムにも積極的に参加し、学んでいってくださいね。