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学生からみた授業

佐井くんから見た授業-医師になるまで vol.9

こんにちは。医学部5年の佐井です。今回ご紹介するのはみなさんが高校で習う生物をさらに深く掘り下げた分野の話です。

 
発生学 Embryology

ヒトも他の動物と同じように、1つの「たまご」が分裂を繰り返してたくさんの細胞になって、それぞれの細胞が分化して違った役割を持つようになって、ヒトという個体ができあがっていきます。母親の胎内でめまぐるしい速さでおこる、この細胞分裂と分化は、遺伝情報に従って秩序正しく起こります。これをうまく使いこなして作りたい細胞を作ろうとするのが、iPS細胞をはじめとした再生医学の研究です。

制御をする遺伝子にもいろいろあって、これまで数多くの研究者によって見つけられてきたのですが、発生学者は遊び心にあふれているのか、変わった名前を遺伝子につけることもあるようです。例えば、「肝臓は右に、胃は左に」といったように左右を決める遺伝子もその1つです。これは北斗の拳のキャラクターに因んで「サウザー遺伝子」と名づけられています。私は読んだことがないので詳細は知りませんが、主人公ケンシロウの対戦相手にサウザーというのがいて、彼の内臓が左右ひっくりかえっているために、いつも通りの拳法が効かず難渋するという話なんだそうです。サウザー遺伝子が正常に働かないと左右が逆になってしまうというわけですね。ほかにもソニックヘッジホッグ遺伝子とかポケモン遺伝子とかいったゲーム由来の命名がされたものもあります。もっともポケモン遺伝子の方は抗議により別の名前に変わってしまいましたが...

 

腫瘍学 Oncology

講義としては全く別の時間に行われますが、発生学のシラバスに「『発生』はじつは『ガン』の『知恵袋』であるので、その営みを知ることが『ガン』の『悪知恵』を暴きその営みを封じることにつながる。」とあるようにこの2つは似ています。というのも、細胞が増えるという意味ではどちらも同じだからです。

さて、規則正しく細胞が分裂しているうちは問題ありませんが、無秩序に細胞が増え始めると困ったことになります。成人でも、皮膚や消化管では細胞分裂が盛んですが、いわば車のアクセルとブレーキのように、分裂を促進する遺伝子と抑制する遺伝子が、厳密に分裂を制御しています。この働きが遺伝子変異により失われて、無制限に増え続けてしまう細胞が、がん細胞です。細胞分裂が過剰に進むなら分裂そのものを止めてしまえ、というのが従来のがん治療の考え方で、放射線をあてたり、抗がん剤を使って細胞を殺してきました。しかし、これらの治療法は、がん細胞の方が死にやすいとはいえ、正常な細胞まで殺してしまうので副作用もあり苦しいものです。

そこで開発されたのが分子標的薬と呼ばれる薬剤です。遺伝子にアクセルとブレーキの2種類あると書きましたが、正常な細胞はアクセルの中でもさまざまある遺伝子を使い分け、ブレーキの方も同様にしています。ところが不思議なことに、がん細胞が使うアクセルとブレーキは、決まっていることが多いのです。分子標的薬はその遺伝子の働きを封じ込めることで、がん細胞は死に、正常な細胞は殺さないという効き方をし、かつては考えられなかったくらいよく効く薬もあります。これに加えて、放射線の方もコンピューターシミュレーションの発達により、よりピンポイントで病巣にあてることができるようになり、正常な細胞は死なせずに済むようになってきています。がん治療の進歩は目覚ましいですね。

 
生化学 分子生物学 遺伝学

まとめてしまいましたが、これらが高校までで習う生物学に一番近いと思います。食物を消化する酵素の働き、消化した栄養からエネルギーを取り出す仕組み、DNAが複製され、その情報からタンパク質が作られる仕組み、遺伝の仕方など、ヒトを含めた生物に共通する仕組みについて学んでいきます。

名古屋大学の場合、生物を入試科目として選択しなくても良かったので、物理と化学を選択した私にとっては初めて聞く話も多かったですが、生物を選択した人にとっては馴染み深い話が多かったようです。よく入試科目で生物か物理かどちらがいいですかと尋ねられますが、私はどちらでもいいと思います。確かに生物を選択しておけば、こういった科目の理解は早く深まるとは思いますが、1年生の教養科目で物理もありますし、生理学など物理の素養が必要な医学もあります。結局のところ、入学したら全員が、物理・化学・生物を勉強することになるので、受験の時は、好きな科目、得意な科目といった選び方でいいと思います。

 

まとめ

分子生物学は1年生で履修し、残りの科目は2年生で履修します。さて、これまで基礎医学の科目の紹介を中心にしてきましたが、結構たくさんの科目がありましたよね。そのうちの大部分が2年生に集中しているので、2年生の1月は試験が連続し、範囲も広くなかなか大変です。今回までが、3年生の前期までに履修する専門科目全てです。次回は3年生後期の研究室配属について書いていこうと思います。

 


バックナンバーはこちら

vol.8 生理学・薬理学

vol.7 免疫学・微生物学

vol.6 社会医学実習(血液型判定と科捜研見学)