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学生からみた授業

佐井くんから見た授業-医師になるまで vol.7

こんにちは。医学部5年の佐井です。vol.6の血液型判定のところで、抗原抗体反応について少し触れましたが、これは生物が生き残るうえで欠かせない免疫反応のひとつです。ということで今回は、免疫学と、その生みの親ともいえる、微生物学についてご紹介しようと思います。

 

免疫学 Immunology

"はしか"や"おたふくかぜ"に一度罹ると、二度とは罹りません。もちろん例外はありますが、人類はこの事実を紀元前にはすでに記述しています。時代は下って18世紀のイギリス。ジェンナーという医師が、牛痘に罹った女性は天然痘に罹らないということを知り、1796年から実験を始めます。それは、牛痘に罹った人にできた水疱の液体を、罹ったことのない人へ注射するという方法で行われました。この注射を間隔をあけて何度か繰り返すと、ついに天然痘ウイルスを注射しても、その人は天然痘を発症しなくなりました。1798年、彼はこの結果を論文として発表し、予防のために人為的に病原体を体内に入れるこの手法を「ワクチン」と名付けたのです。ウイルスを観察するすべを持たない時代に生み出されたこの画期的な発明は、天然痘の予防のみならず、1980年に撲滅を達成するほどの偉大なものとなりました。

 

さて、このように特定の病気に対して二度と罹らなくなるようなしくみを獲得免疫といい、ここで重要なのが、抗原抗体反応です。抗A抗体はA抗原にしかくっつかないのでしたよね。抗体ごとに相手の抗原は決まっているのに、外敵となる無数の病原体それぞれに対して、初めて出会うものであっても、抗体を作ることができるようになっているのはちょっと不思議じゃありませんか?たくさんの種類の抗体はどのように作られているのでしょう?

抗体も筋肉などと同じようにタンパク質の一種で、遺伝子の中に作り方が書かれています。いわばタンパク質の設計図である遺伝子の記述通りに組み立てていくことで、どの細胞も同じ形のタンパク質を作ることができるわけですが、多様性がある抗体の作り方は他のタンパク質とはやや違っています。

抗体を作るのはB細胞と呼ばれる細胞で、分化の過程で遺伝子再構成ということをします。成熟したB細胞になる際に、抗体に関連する遺伝子をつまみ食いするような形で、遺伝子の並びを変えますが、B細胞それぞれが違った組み合わせになるよう選び取っていくので、産生される抗体の抗原にくっつく部分の形もそれぞれ変わって、多くのバリエーションができるのです。

 

遺伝子再構成抗原にくっつく部位の設計図はV,D,Jの3領域からなっていて、それぞれひとつずつパーツを選び取って、ひとつの抗体の設計図とするしくみは、単にたくさんの種類の遺伝子を用意しておくより遥かに多くのパターンが作り出せます。マウンテンバイクの変速ギアで考えてみましょう。ペダルのところと後輪のところにギアがついていますよね。仮にペダルが3段、後輪が7段とすると、用意されているギアは10種類ですが、変速の段階としては21段となり、ギアの数の2倍以上のパターンを作り出すことができます。非常に効率的な手法で、これが進化の過程で作り出されたということに驚きを隠せません。このようにあらかじめ無数のパターンの抗体を持っておき、外敵が侵入してきたら、うまくくっつく抗体だけたくさん作って、排除に役立てているのです。

今回は獲得免疫の一部である抗体を中心に書きましたが、そのほかの免疫のしくみも、システマティックに組みあがっており、自然の不思議さを感じました。

 

微生物学 Microbiology

細菌、真菌、ウイルス、寄生虫という4種の生き物の中でも、特にヒトに対してなにか影響を与えるものを扱います。ヒトとの関係を常に意識しているので、医真菌学とか医動物学といった言い方もします。ひたすら暗記の科目で、菌の名前、染め方、形、症状、薬、届出義務など内容は多岐にわたり、例えば「結核はMycobacterium tuberculosis という学名の、抗酸菌染色で染まる細長い形で、肺を中心として全身に症状を起こす細菌。治療には3種の抗菌薬を6ヶ月間続け、結核と診断したらただちに保健所に届け出る義務がある。」といったことを覚えていきます。慣れるまでは大変ですが、生き物が相手なのでイメージが湧きやすく、人の名前や性格を覚えるみたいで案外楽しいものです。

実習では、菌の同定を体験しました。2、3種の細菌が植えられた皿が渡されて、中に何がいるのかをあてるという実習で、それぞれの菌の性質をもとに絞り込んでいきます。どんな色に染まるのか、空気があったほうが育つのか、どんなエサ(培地)を好むのかなどの条件で振り分けていき、最後にはひとつに決まるわけで、それぞれの菌の個性を眺めているようで面白かったです。また観察を通じて、1000倍で見ても数mmの大きさにしか見えないくらい小さな生き物だということを改めて実感しました。

 

染め方としてはGram染色という方法が最も多く使われ、紫に染まるのは丸い菌(球菌)が多く、誰もが体の表面に持っている黄色ブドウ球菌などが代表的です。ピンクに染まるのは細長い菌(桿菌)が多く、こちらも誰もが持っている大腸菌が代表的です。

さて、菌や寄生虫と聞くと怖いイメージがあるかもしれませんが、人間が生き物である限り、これらは切っても切れない関係です。悪玉菌、善玉菌というように、人間にとって良い菌もたくさんいます。なんでもかんでも殺菌すれば良いというわけではなく、大事なのは菌と上手に付き合っていくことだと思います。食前の手洗いなんかは病気の予防として大切ですが、洗い過ぎは手荒れの原因にもなります。腸炎などでも、薬で菌を殺しすぎると善玉菌まで減ってしまい、かえって腸内細菌のバランスが崩れて病気になってしまうこともあります。必要な時に必要な分の薬を使うということが重要です。ただし、出された薬はきちんと飲みきってくださいね。薬が効かない菌(耐性菌)を生み出してしまうこともあるので...

 
まとめ

病気の勉強という意味ではvol.3で書いた病理学も面白いのですが、扱う病気としてはがんが多くあまり実感が湧きません。それに比べて、インフルエンザやノロウイルスなど自分たちにとって身近な病気と、それが治る過程についての勉強なので理解はしやすかったです。 今回は3年前期に履修する免疫学と、微生物学の中でも特に細菌学についてご紹介しました。

 


バックナンバーはこちら

vol.6 社会医学実習(血液型判定と科捜研見学)

vol.5 衛生学・法医学

vol.4 独特な時間割・名大の特長