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学生からみた授業

小川くんから見た授業-ある講義について(農学部)

受験生の皆さん、こんにちは

生命農学研究科・博士課程教育リーディングプログラム(リーディング大学院)「ウェルビーイング」プログラム学生の小川高広です。

今日は農学部で行われている講義について紹介します。私は大学院生命農学研究科に所属しています。その学部が農学部です。チアーズを読んでくれている皆さんのほとんどは学部に入学を希望する方だと思いますので、入学後は今日紹介するような内容の講義(大学では授業のことを講義と言います。もちろん授業という場合もありますが)を学ぶんだぁと思いながら、読んでもらえればと思います。

ところで、大学の講義には必修科目と選択科目があります。卒業のために、必修科目は文字通り全員が受けなければなりません。選択はその学生の専攻や本人の意思で受けるか受けないか決められることもあります。卒業のために必要なくても、自分の勉強のためにその講義を受けたければ、先生にお願いし許可をいただけたら受講することも出来ます。名古屋大学の場合は講義は15回が基本で、190分となっています。また実験などの場合は時間が異なりますし、大学によっては講義の時間は100分のところもあれば、50分のところもあります。それに伴って講義の回数も名大の15回とは変わってきます。

 さて、今回は必修科目の「生命農学序説」の内の一つを紹介します。これは一年生が全員受ける講義で、農学とはそもそも何なのかについて学びます。この回では環境と農学をテーマに、現在の地球環境と農学とのかかわり方などについて学びました。 講義内容について、私なりの言葉と感想も交え、まとめてみました。少し硬いかもしれませんが、読んでみてくださいね。

 

皆さんは地球環境が変化していると思いますか。国連や各国の政府、マスコミ、書籍やインターネットなどで地球環境の変化について様々な話が出されています。そのような中、日本の環境省が発行した報告書によると、地球環境の変化、例えば異常気象や温暖化は人間の活動が主な原因として考えられるとのことです。特に地球の温暖化は進行しているとされています。その温暖化は温度の変化をもたらし、その結果、地球環境に対して好ましくないことが引き起こされており、農業の生産への悪い影響などが挙げられています。今まで育っていた作物が育たなくなったり、あるいは今まで育っていなかったところで育つようになったりと、土地を植物の最適な場所に持っていくことは出来ないので、農家にとっては大きな問題になりつつあります。また干ばつ被害も深刻であるとしています。今まで雨が降っていた地域に全く雨が降らなくなったりしています。世界の穀物市場に大きな影響を持つアメリカでは、2000年代に入り深刻な干ばつが続き、穀物の生産がいつもよりも少なくなったため、2008年には世界の穀物の価格が急騰しました。急騰した原因はそれ以外にも途上国の人口が増え、穀物に対する需要も増えたこと、食用だった穀物をバイオ燃料のために使うようにしたこと、その他に、投機的資金の流入(高騰した穀物を買い占めてさらに高い値段で売ることで、大きな利益を得ようとする人々の出現)など人為的な原因によって高騰したことも指摘されました。

ところで、なぜアメリカは世界の穀物市場に影響力を持っているのでしょうか。それはアメリカの広大な土地を利用して多くの穀物を生産し、それを世界中に輸出しているからです。アメリカは国家戦略として、穀物などを含めた農作物の輸出に力を入れています。アメリカ政府は農家へ補助金を出し、多くの農作物を生産させて世界中に輸出することで、世界への影響力を保とうとしています。日本は歴史的な背景からアメリカから穀物を含め多くの農作物を輸入しています。輸入農作物に占めるアメリカの割合は25.5%となっています(2014年 財務省貿易統計)。私たちの伝統的食材である醤油、味噌、豆腐などに使用されている大豆の62.9%、食用や牛などの家畜のための飼料に使用されるトウモロコシの84.3%がアメリカから輸入されています(2014年 財務省貿易統計)。この他にも小麦などがアメリカから多く輸入されています。これらの数字を見るとアメリカが日本人の食生活に大きな影響力を持っていると言えます。実際に以前、アメリカの政策の決定で日本中が騒動になったことがあります。1970年代にアメリカが穀物の輸出を停止し、日本などの輸入国は衝撃を受けました。この輸出の停止はアメリカ大統領選挙を控えた当時のニクソン大統領が国内の穀物価格を安定させるために配慮した決定でした。この背景にはアメリカと敵対していたソ連(今のロシア)が歴史的な凶作に見舞われ、十分な穀物を確保できなくなったことが関係しています。ソ連は極秘にアメリカの穀物を輸出する巨大な会社に穀物を売ってくれるよう頼み、大量の穀物を確保しました。しかしこの話が漏れてしまい、世界の穀物価格は急上昇しました。アメリカも穀物価格が上昇し、人々の不満が高まり始めました。そこで、ニクソン大統領は輸出を止め、輸出用の穀物を国内用にすることで価格を安定させようとしました。輸出停止後、日本政府はアメリカ政府と交渉し何とか輸出は再開されましたが、影響を受けた日本や他の国々はリスクを回避するためにアメリカだけから穀物を買うことを止めました。アメリカは輸出先の信頼を失った訳です。買われなくなった大量の穀物はアメリカだけで消費することは出来ず、余った穀物は今度は重荷になってしました。結果としてアメリカの農家は収入が減ってしまい、アメリカ政府も穀物の買い手がなく困ってしまったようです。ニクソン大統領の決定で、穀物を輸入している国々のみならず、アメリカ国内の農家や政府も含め、みんなが大変な思いをすることになったのです。自分の国だけがよかったらいいという発想は現在にも通じるところがあるかと思いますが、この教訓を生かして欲しいと思います。

そのような出来事から40年以上が経ちますが、穀物市場でのアメリカの影響力は今なお健在です。リスク回避のため、輸入先をアメリカだけにはしてはいませんが、政治的な理由もあり、依然としてアメリカから多くの穀物を買っています。巨大な生産地に日本人の胃袋を預けている現実があることを、私たちは考える必要があるかもしれません。

少し話は脱線しましたが、温暖化と農業生産の話をしましょう。日本では気温の変化によって、最近リンゴやミカンの生育に影響を与えていると言われています。今まで生産地だったところで、採れなくなって来ています。このようなことはコメでも起こっています。コメは暑いところで育つ植物であるため、北海道では栽培に適さないとされ、寒い北海道ではおいしく、上質なコメは作れないとされてきました。しかし、最近は事情が異なって来ています。おいしいコメが北海道でもさかんに生産され、北海道のコメ農家が恩恵を受けています。気温の変化をうまく活用し、品種改良を続けて来た北海道のコメ農家や研究者の方々の努力の結果でもあります。皆さんも有名芸能人が出演する「ゆめぴりか」や「ななつぼし」などのコマーシャルを見たかもしれません。北海道で作られたおいしいコメの消費拡大も積極的に取り組まれています。しかし、環境の変化は今まで考えられてきた農業生産地の常識が将来大きく変わる可能性があります。

私たちは日ごろ環境の変化をあまり意識していないかもしれません。しかし、食料生産の面から見ると環境の変化を感じることが出来ます。環境の変化によってある地域では農作物の生産が活発になる一方で、別の地域では農作物の生産が減り、人々の生活に影響を与えるかもしれません。農作物生産がうまくいかないと、途上国のように爆発的な人口増加に対応できなくなるかもしれません。そのような時は、食料確保のための紛争が起こる可能性も考えられます。それらの事態が起こらないように、世界は対処して行かなければなりません。食料生産を研究する農学が果たす役割は大きくなっています。農学は平和を構築する学問だとよく言われるのは、それが理由の一つかもしれません。

 

 少し長くなりましたが、簡単にまとめた講義はいかがでしたでしょうか。先生の講義を聞きながら、農学には環境の問題や世界の情勢など様々なことがかかわっていることを認識し、環境の変化によって生じる食料の問題についても学びました。名古屋大学を目指している皆さん、農学は「熱い」学問だと思いませんか。興味があれば、農学の道も考えてみてください。試験勉強頑張ってくださいね。


参考資料

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書 平成25927日環境省発表 

平成27年度食料・農業・農村白書2015年 農林水産省 P34P156

農業と人間 : 食と農の未来を考える 2013年 生源寺眞一 P34P35 

アメリカの穀物輸出と穀物メジャーの発展2006年 中央大学出版部 茅野信行 P6P7

平成15年度果樹農業生産構造に関する調査報告書 -果樹農業に対する気象変動の影響に関する調査

独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構(現農業・食品産業技術総合研究機構) 果樹研究所 杉浦俊彦

北海道米販売拡大委員会http://www.hokkaido-kome.gr.jp/about/