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学生からみた授業

廣瀬くんから見た授業-大学で学んだ数学の学習のポイント

みなさんこんにちは!理学部数理学科3年の廣瀬です。前回まで、大学で学ぶ数学を分野ごとに紹介させていただきましたが、今回は趣向を変えて、大学の(もしかしたら高校の数学の授業で聞いたこともあると思います)講義などで、よく聞く数学用語を紹介します。「定義」と「定理」、私自身、高校まではあまり違いを明確にせずに数学を勉強してきました。しかし、より厳密に理論を構築していく大学での学びを通じて、これらの違いを意識して勉強することが非常に重要であると気づきました。

 

私が最も大学での数学で苦戦したのは、定義と定理を混同していたのが原因でした。定義とは大ざっぱにいうと、何かある性質をもったものや、○○な状態であることに名前をつけることです。小学校で習ったと思いますが、3辺がすべて等しいという性質をもった三角形を「正三角形」という、このことは正三角形の定義です。もう少し難しい例を挙げると、「関数f(x)が微分可能である」という性質は、{f(x+h)-f(x)}/hの、hを0に近づけた時の極限が存在することと定義され、f(x)が微分可能であるという条件下で、導関数f'(x)は(f(x+h)-f(x))/hの、hを0に近づけた時の極限と定義されます。ここで大事なのは、定義はこれまでの数学の歴史の積み重ねの中で、人間に都合の良いように先人たちが定めたことなので、定義を習ったばかりの頃は「なぜこの性質をこのように定義するのか」、「なぜこんな名前がついているのか」といった疑問が浮かぶこともあると思います。しかし、その定義に関連する分野の学習を進めていくと、徐々に「このように定義したのはここで便利だからだったのか」と、納得して定義を受け入れられるようになってきます。また、なにか新しい概念である定義を、図やグラフなどを駆使して感覚的に理解することも、定義の定着に必要です。たとえば先の三角形の例でいうと、正三角形や二等辺三角形、直角三角形など様々な三角形をこれまで学習してきたと思いますが、正三角形と聞いて「3辺がすべて等しいという性質をもった三角形」という定義を言葉で思い浮かべるよりも、3辺がすべて等しい三角形の図が頭に浮かぶと思います。また習いたての頃を思い出してほしいのですが、おそらく小学校の教科書や先生の板書では定義を言葉で書いて、さらに図を書き添えていたと思います。つまり、定義の文字列を覚えるのは難しく、応用を利かせづらいですが、図という視覚に直接訴えかけるイメージが、定義の定着と応用に大きな役割を果たしているのです。以上から、定義はただ無味乾燥な文章を暗記するのではなく、感覚的な理解と納得を心がけ、またそれが難しい(理解に苦しむ)場合は、とりあえず現時点では理解をあきらめ先に進み、その定義の応用例などを学習してから定義の便利さや使い方を知ったうえで、定義自体を感覚的に味わってほしいと思います。

一方、定理というのは、命題(正しいか正しくないかが誰にとっても明らかである文章。「2は自然数」というのは真の命題、「4は奇数」というのは偽の命題、「100は大きな数」というのは命題ではない、なぜならば大きいという主観は人によって異なるから)のうち、今後の学習に重要な真の命題を指します。公式は定理のうち、数式であらわされたものです。命題、というからには定理というのは必ず証明できます(もちろんその時点の知識では証明できない定理もありますが、さらに勉強を進めていくと証明できるようになるはずです。また、重要・有益そうな、真であると思われる命題だが、まだ世界で誰も証明できていない命題は「予想」と呼ばれています)。というよりも定理の深い理解は証明によってなされるので、定理が出てきたら必ず証明の道筋を理解してほしいです。なぜ定理は証明も含めて理解すべきかというと、まず、定理の証明はそれまでに出てきた定義や別の定理を利用して示されるものが多く、つまりそれらを使いこなす練習になるということです。また、定理の主張だけ覚えているよりも、その証明を理解しているほうが正しくその定理を使えるようになります。たとえば、証明の道筋を追っていくことでその定理が成立する条件を意識でき、その結果、条件を満たすことを確認してから定理を適用できるようになります。

定理の類義語として「補題」や「系」という言葉もあります。補題はある重要な定理を示す証明の中で用いる命題で、系はほかの定理を用いると比較的簡単に導ける命題のことです。一方、定理よりも少し重要度の落ちる主張を「命題」ということもあります。これらの言葉は本の作者や板書する先生の主観(どれが重要な主張か)に基づいて使い分けられるので、慣れるまではこれらの言葉は全部「定理」と言い換えてもいいです(ただしこれらの意味の違いをしっかり読み取れるようになると、作者がどのような道筋でその理論を構築できたのかという思いの一端を感じられ、理解の一助となります)。いずれにせよ、「定理」「命題」「補題」「系」は証明も込みで理解し、そのうえで用いていくもの、と覚えておいてほしいです。

ここで、上の定義・定理の意味の違いを明確にして、以下の対数の定義とその性質(の一部)を、教科書と思って読んでほしいです。大学で用いる大体の教科書や参考書は、定義と定理(とその証明)の積み重ねに、時々、定義のイメージや定理の使い方がわかる具体的な例や例題が挟まっている、という形式で書かれており、私も以下のような書式で講義や教科書をまとめたノートをとるようになってから、理解がこれまでよりも深まっていきました。

 

定理1

a>0,a≠1とするとき,任意の正の数bに対してax=bを満たす実数xが,ただ1つ定まる

(証明)グラフ(写真掲載)より明らか

定義2

定理1の時、xをlogabと表す。

例3

23=8よりlog28=3(この時2>0,2≠1,8>0に注意する).

補題4

x,y>0の時、axay = ax+y (指数法則)

(証明)ここでは簡単のためx,yを自然数とする(実数の場合の厳密な証明は大学で習う、ε-N論法という技法を用いるのでここでは省略します)。

すると写真のような証明により等式は成り立つ(厳密には数学的帰納法を用いた方がいいです)。

 定理5

a>0,a≠1,b,c>0とするとき,logabc=logab+logac

(証明)

x= logab,y= logacとおくと、定理1によりx,y>0.

また、定義2よりax=b,ay=c.

よってbc=axay=ax+y(補題4を用いた)

以上より(左辺)=logabc=logaax+y=x+y=logab+logac=(右辺).

 

高校までの教科書や参考書では、上のような書き方でない(定義と定理の区別が一見すると判別しづらい)こともあります。また、高校までの範囲では証明できないことも定理として習う(上では指数が実数の時の指数法則)ので、「定理は証明してから使う」という意識にもなりづらいかもしれません。ただ、高校生のみなさんも定義と定理をしっかり区別して読むと、教科書や参考書をこれまでよりもしっかりと読めるようになるかもしれません。ちなみに、私がこの感覚を会得したのは大学2年の時に受けた線形空間の講義でした。この講義は新しい概念が大量に出てくるので、最初は教科書や板書の文脈を追うのもままなりませんでしたが、定義と定理の違いを明確にして臨むと「これは感覚的に理解すればいい」「これはこれまでの知識を駆使して証明すべき」という、一つひとつの主張に対する姿勢が明確になり、それまでより格段に読めるようになりました。名大では演習科目が多く(3年次まで毎期1科目以上は数学の演習科目が用意されています。講義で多くの問題が配布されそれを講義時間中に、先生に質問しながら解いたり、レポートとして後日提出したりして添削してもらう形式)、また普通の講義においても、前半は講義で後半は演習という形なので、問題を解く機会が講義時間内に限っても多く確保されています(もちろんそれだけでは足りず、校外でも復習は必須ですが)。その際も教科書をしっかり読めていると問題も解け、また解けない場合もどこがわからない(定義のイメージができないのか、定理の使い方に習熟できてないのか)のかが明確になるので、解決もより簡単にできるようになりました。

今回はかなり専門的な話でしたが、数学を大学以降も学びたい人には特に意識してほしいと思います。それでは今回の記事はこのあたりにしたいと思います。次回以降も名大で学んだ数学についての記事を書いていきたいと思います。