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学生からみた授業

廣瀬くんから見た授業-大学で学ぶ数学(線形代数編)

皆さんこんにちは!理学部数理学科3年の廣瀬です。前回から大学でどのような、また、どのように数学を学ぶかという記事を書かせてもらっています。前回は微分積分についてですが、今回は線形代数についてです。線形代数と聞いてもよくわからないと思いますが、最初のうちはベクトルや、ベクトルを拡張してできる「行列」というものを対象とする数学、と認識してもらえたら大丈夫です。高校では微分積分よりも扱いは小さいですが、大学では線形代数も同じくらいさまざまな分野で応用され、また、線形代数そのものもとても奥が深い領域で、群論など他分野の理論の基礎となっています。

 

名大では多くの1年生(特に理系)が線形代数学という講義を履修します。内容としては、まず、行列の演算(加法や乗法など)や性質、行列式という新たな概念の導入などを通じて「行列」に主眼をあてて学習します。行列は連立方程式と密接に対応しているので、工学や経済学などのあるデータを用いた解析の際に有用です。たとえば、手計算では途方もなく時間がかかりそうな大きなサイズの(つまり、たくさん変数がある)連立方程式を解く時、コンピュータに解かせるのですが、コンピュータに指示を与える際に連立方程式をそのまま打ち込むのではなく、その方程式と同値な行列の問題を解かせるほうが実用的(早く解を求められる)なのです。単純な計算の積み重ねならばコンピュータは人間より早く正確に解を導けるのですが、それをコンピュータに計算してもらうには問題を人間が噛み砕いて単純な演算の連続で解ける形にしてから打ち込む必要があり、この場合の「噛み砕く」の手順で行列の知識が必要です。また数学においても、あらゆる分野で行列の知識は必要で、幾何学は顕著な例です。たとえば、2次元上での座標平面(つまりはxy平面)上のある点を、原点を中心としてある角度だけ回転させるという操作に対応する行列を回転行列といい、実際に三角関数を用いて簡単な形で表せます。このような行列を考えると、点の回転という幾何学的操作を、行列の演算という計算に帰着させられ、問題を解くのに役立ちます。さらに、行列の計算の最も重要な手法として対角化というものがあります。これは微分方程式や累乗を求める際に多くの学問で有益なので、1年生のうちに理系学生の多くが学びます。

次に、行列の概念を「線形空間(ベクトル空間)」というものに拡張しますが、ここでまず「体(たい)」というものを考えます。たとえば、実数全体の集合や有理数全体の集合は、加法と乗法で閉じていて(つまり、任意の実数(有理数)を足したり掛けたりして得られる数も必ず実数(有理数)である)、さらに、結合法則や交換法則、分配法則など、計算の際に利用してきた性質が成り立つことは知っています。このような集合を体といいます(厳密な体の定義は多くの代数の本に載ってますし、「数学 体 定義」で検索しても見つかります)。次に線形空間とは、加法と定数倍(ここで定数とは何かの体の元、たとえば実数や複素数をとります)で閉じていて、さらに結合法則や分配法則が成り立ち、加法において交換法則が成り立つ(乗法においては交換法則が成り立つ必要はない)集合のことです。この定義から、体ももちろん線形空間ですが、体でない線形空間としては高校で習うベクトルがあります。正確には「同じサイズのベクトル全体の集合は線形空間である」(たとえば2次元ベクトルと3次元ベクトルは足したりできませんよね)といえます。ベクトル同士の乗法というものは考えませんでしたが(内積は掛け合わせることとは異なります)加法や定数倍は考えましたよね。同じサイズの行列全体の集合も線形空間の一つです。ここで気づかれた方もいるかもしれませんが、線形代数学とは、線形空間内で成り立つ理論の構築なのです。行列も線形空間の元なので、行列の理論も具体的な線形代数の一部として学びます。

 

ここからはキーワードを挟みながら講義でどのように学ぶかを簡単に触れていきます。気になる分野やキーワードがあればぜひ検索してみたり、数学の先生に聞いてみたり、代数の本で調べてみてください。1年生においては行列を学んだあとは2年生以降に向けて抽象的な線形空間に少し触れて、その後、非常に重要な概念である「基底」というものを学びます。他学科の多くの人は線形代数について、これ以上抽象的な概念は習わないと思います。しかし、先にも触れましたが、計算の際に行列やベクトルの計算は頻繁に出てくるので、早い段階で習熟しておくといいと思います。数理学科に進んだ場合は2年生で線形空間の性質を広く学び、また、行列に関して「ジョルダン標準形」という計算に優れた形に変形する手法を学びます。3年生以降では線形空間に似た概念で、「群」や「環」、「体」を線形空間の時と同じように、成り立つ性質を証明しながら対象に対する理解を深めていきます。これらの分野は線形代数学をさらに拡張した「代数学」と呼ばれます。簡単に紹介しておくと、群とは「対称性を保つ動きを元にもつ集合」で、環とは多項式のように加法と乗法が定まった集合のことです。私は現在、群について学び始めたばかりなので詳しいことはまだわかりませんが、勉強の仕方としては2年生での線形空間の勉強法と似ているので、線形空間という非常に重要な概念の理解という点でも、抽象的な概念に対峙する勉強法の会得という点でも、2年生での学習はしっかり行うべきだと思います(私自身も、線形代数に限りませんが、もっと勉強すればよかったと感じています)。これらを発展させて、有名な「ガロア理論」に至るまでの理論の構築が、代数学の学部4年における集大成と言えるでしょう。ガロア理論とは、簡単にまとめると方程式はなぜ解けるか、という問いに体や群の考えを用いて答えたものです。今回も名大数理学科の講義の概要を載せたサイトを貼っておくので興味のある方はのぞいてみてください。https://www.math.nagoya-u.ac.jp/ja/education/2018/ug-curriculum-1.html

 

以上が、数理学科に進んだ場合の行列から始まりガロア理論にまで至る代数学の展開です。最初は難しそうに聞こえるでしょうが、一つひとつ丁寧に計算演習や定理の証明やその実例を追っていけば、きっと理解できるはずです。代数学について、高校までの分野で関係が深いのはベクトルです。しかし、高校までで習うことは全て、どの領域でも前提知識として求められるので、入試で数学を得点源にするという意味でも、大学で数学を学びたいと思った人は、苦手分野を作らないで数学を学んでいってほしいと思います。次回も数学の一分野を取り上げた記事を書きたいと思います。