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中野 覚矢

理学部物理学科4年生(2020.4現在)
出身地: 静岡県

2018/11/04

~現代素粒子物理学最前線~ 高校生・研究現場体験に参加しました!

https://pixabay.com/ja/抽象的な-コスモス-スペース-素粒子-効果-光線-明るい-3460328/ より引用https://pixabay.com/ja/抽象的な-コスモス-スペース-素粒子-効果-光線-明るい-3460328/

 

2018年11月4日に名古屋大学にて、あいちサイエンスフェスティバル2018の目玉イベントである、講演会「~現代素粒子物理学最前線~ 人類が対峙する宇宙暗黒面の3つの謎」、そしてそのすぐ後に「~現代素粒子物理学最前線~ 高校生・研究現場体験」が開催されました!

 

僕もかつて高校生だったころに、とあるサイエンスキャンプに応募した経験があります(やはり落選しましたが)!! そのため、当時に戻った気持ちで後ろから見させていただきました。

 

一参加者の視点から、今回のイベントについて、レポートさせていただきます!

 

 

講演会 人類が対峙する宇宙暗黒面の3つの謎

 

  

 

講演会は野依記念学術交流館にて開催されました。対象は一般向けであり、研究現場体験に参加する高校生以外にも、多くの一般の方が参加していました。

そして、講演者は僕たち理学部の学生の講義を受け持つことも多い、名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構(KMI)の先生です!

 

今回は、やはり一般向けということもあり、講演は理学部物理学科の2年生が受講する講義と同等の内容を扱っていたように思えます。

 

以前の記事のように講演会の全容を紹介したいところですが、4名の先生が90分に詰め込んだ講演を事細かに記憶し、それを要約して平易な文章にするのは至難の業なので、今回は要点だけ説明させていただきます...。

 

 

オーバービュー

 

講演の前に、素粒子論研究室(E研)の久野純治教授によって講演の概要が話されました!

以下に概要の概要を示しましょう。

 

 

素粒子とは何か?

 

素粒子とは、世界を形作る最小単位です。

17個の素粒子は、「標準模型」という理論によって支配されています。

 

 

 

http://higgstan.com/standerd-model/ 

 

完成された標準模型は高い予知能力を持つ理論であり、10-18,10-19(m)以上のスケールで物理現象を記述することができます。

 

しかし、標準模型では説明できない現象もいくつか残っており、その内容が以下の講演で語られています。

 

名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構(KMI)のミッションは、標準理論で説明できない、こういった「暗黒宇宙」を明らかにし、標準理論を作った小林益川両先生を越えることです。

 

講演1「超巨大加速器で迫る隠された時空と真空の構造」

 

講演者は、高エネルギー素粒子物理学研究室(N研)の戸本誠准教授です!

戸本先生は理学部1年生の「物理学基礎Ⅰ」という講義を担当されており、僕も2017年に戸本先生の講義を受講しました。

 

 

 この講演では、まず素粒子の質量の起源とされる「ヒッグス粒子」の説明と、スイスとフランスの国境にある世界一大きい加速器、LHC(Large Hadron Collider)を用いたヒッグス粒子の発見の経緯が説明されました。

 

(どうでもいいですが、名古屋大学の素粒子物理学の先生がLHCを説明する際には、LHCの全長が名古屋市の地下鉄"名城線"の全長と同じ程度だということが決まって話されます。)

 

このヒッグス粒子の発見は単なる新たな粒子の発見ではなく、今まで空っぽの空間だと思われていた「真空」が実は「ヒッグスの場」というものによって満たされていることを示唆しています。

17個目の素粒子であるヒッグス粒子の発見により、素粒子の理論である「標準模型」が完成し、我々の日常生活における現象は全て物理学で説明できるようになりました。

 

しかし、ヒッグス粒子に関しては未だ分かっていないことが多く、「ヒッグスの場」を何ら原理なく導入していることや、ヒッグス粒子自体の質量の導出が不自然であるといった、「標準理論」では説明しきれない問題点が残されています。

 

そういった問題点を解決するために、超対称性粒子余剰次元といったものの存在が期待されており、それらは現在LHCが観測を試みています。

 

 

※この講演は非常に難しい内容でした。前提知識を想定すると、平易にかみ砕いて説明することは不可能と思われます。というか、「ヒッグス機構」、「標準模型」などを根本から理解することは学部2年程度の知識ではそもそもできません。興味がある方はこれらの単語を検索するなどして調べてみてください。

 

 

講演2「反物質を誰が消した?未知の素粒子現象の探索」

 

講演者は、戸本先生と同じく高エネルギー素粒子物理学研究室(N研)の飯嶋徹教授です!

飯嶋先生は1年生向け講義「基礎セミナー」という講義や、理学部物理学科2年生の「先端物理学特論」という講義を担当されています。

 

 

この講演では、題名通り現在の宇宙に「反物質」が存在しない謎が紹介されました。

 

反物質は、「反粒子」という、通常の粒子と性質が同じですが、その電荷(+と-の電気)だけが通常の粒子とは逆である粒子で構成された物質です。

(...急に「反なんたら」と言われても、馴染みがなく意味も分からないかもしれませんが、反粒子はポジトロン断層法(PET)でガンの診断にも用いられており、実際に存在する粒子です)

 
 その反物質・反粒子の際立った特徴として、対消滅対生成が挙げられます。
 

反物質(反粒子)はその反物質(反粒子)に対して電荷が逆である物質(粒子)と出会うと消滅し、その質量がエネルギーに変わります。これが対消滅です。

逆に、かの有名な方程式「E=mc2」に従って、エネルギーから質量を持つ粒子が生成されることがあります。これが対生成で、対生成の際には必ず同量の粒子と反粒子が生成されなければなりません。

 

 

 

さて、突然ですが、宇宙の始まりがどのようなものであったか、ご存知でしょうか?

 

詳細は省きますが、多くの観測結果から、宇宙は今まさに膨張していることが分かっています。このことから、昔の宇宙、つまり膨張する前の宇宙は今よりも小さなものであったことが考えられますね。それを極限まで小さくすると...、宇宙は豆粒よりもさらに小さくなってしまいます。

そう、宇宙の始まりには、現在宇宙に存在する惑星、恒星、銀河といった全ての物質がたった1点に凝縮されていたのです。

 

つまり、宇宙の始まりには、非常に高エネルギーが小さな場所に集中しており、まるで火の玉のようになっていました。宇宙はその状態からビッグバンによって急速に膨張し、それに伴って粒子が対生成されたと考えられています。

 

 

宇宙の始まりにおいて対生成が起こり、エネルギーから粒子が生成されました。現在宇宙に存在する粒子は全て、そのとき対生成によって生成された粒子であるはずですね。

 

しかし、ここで問題が生じます。対生成の際には、粒子と同量の反粒子が生成されねばならないのです。もし、反粒子が粒子と同量生成されていたら、じきに粒子と反粒子が出会って対消滅を起こし、結局今に至るまでに全ての粒子が対消滅してしまって、我々の体を構成する粒子も残っていないはずです。

 

とはいえ、粒子から構成されているあなたが今存在して記事を読んでいますから、何らかの要因で粒子は反粒子よりも多く存在したのです。そして、ほとんど全ての反粒子は対消滅を起こし、現在では反物質を構成する程度の量の反粒子は残っていません。また、現在観測されている反粒子は、宇宙初期に生成されたものではなく、何らかの反応によって最近つくられた粒子である可能性が極めて高いです。

 

 

標準理論では、なぜ粒子が反粒子よりも多く存在したのかを説明することができません。

 

標準理論を越える「新しい物理」の解明のため、より高エネルギーを用いて未知の素粒子を生成しようとする「エネルギーフロンティア」増強・既知の素粒子の反応をより精密に測定し、標準理論からのズレを測定しようとする「ルミノシティフロンティア」増強の2つの観点から実験が進められています。

 

日本でも、その最先端研究であるSuperKEKB/Belle Ⅱ実験が2019年より開始されます。

 

 

講演3「素粒子観測で探る宇宙構造形成の起源」

 

講演者は、宇宙線物理学研究室(CR研)の伊藤好孝教授です!

伊藤先生は1年生の教養科目「宇宙科学」や理学部物理学科2年の「物理実験学」などの講義を担当されており、僕も今まさに伊藤先生の物理実験学を履修しています。

 

 

講演は、宇宙が現在の構造になった起源についての内容です。

 

 

 

先ほど、宇宙の始まりは火の玉であったと述べました。

今の宇宙には、局所的に物質が多いところと少ないところがあります。要するに、銀河(星)があるところには物質が多く、銀河と銀河の間には物質は存在せず、真空状態となっています。さらに、もっと大きなスケールで見ると、多数の銀河が集まっている場所と、銀河が少ない場所が存在します。

では、宇宙の始まりの火の玉には、なにか局所的なゆらぎがあったのでしょうか。

 

実は、ゆらぎはあったのです。それは、宇宙背景放射として観測されています。

 

https://www.nasa.gov/feature/making-sense-of-the-big-bang-wilkinson-microwave-anisotropy-probe

 

この画像は、初期の宇宙の温度の分布を表しています。非常に僅かですが、温度分布にはゆらぎがあるのが見て取れます。

このゆらぎがなく、宇宙が一様に膨張した場合、粒子の間隔も一様であるまま広がってしまうため、粒子間に働く重力が釣り合ってしまって今のように銀河や恒星が形成されるようなことはなかったでしょう。

 

しかし、このゆらぎは非常に僅かなもので、初期宇宙に存在していた水素やヘリウムといった元素だけでは、現在の宇宙で形成されているほど局所的な物質分布の構造を形成することは不可能です。

つまり、標準模型では現在のように銀河などが形成され、物質が局所的に分布している宇宙が形成された説明ができないということです。

 

そこで、考えられたのが「ダークマター」という粒子の存在です。

物質が広がる前に、質量を持つダークマターが先に局所的に分布していたと考えることで、現在のような宇宙の構造を説明することができます。

 

 ダークマターによる非常に微弱な信号を直接観測するため、検出器それ自体が出す放射線の影響を極限まで排除した検出器の開発が進められています。

 

 

 パネルディスカッション

 

 

 

講演終了後は、15分の休憩をはさんで質疑応答の時間が設けられました。

パネルディスカッション時には、写真からもわかるように、素粒子宇宙起源研究機構(KMI)機構長として2008年ノーベル物理学賞を受賞した小林誠特別教授も参加されていました!

 

この時、講演者の5名の先生方が高校時代にどのようにして進路を決めたか(何故物理学を学ぶと決めたか)をお話ししてくださったので、紹介させていただきます! (回答順)

 

 

小林先生

高校時代に、アインシュタイン、インフェルト共著『物理学はいかに創られたか』を読み、高校で学ぶことと全く異なる物理学を学びたいと思った。

 

久野先生

父親が素粒子を好きで、家に多くの(素粒子に関する)本があった。それを読んでいたこともあり、高校3年生の中ごろに理学部受験を決意した。

 

飯嶋先生

実は高校生の頃は物理が苦手で、作用反作用などは何を言っているかよく分かっていなかった。しかし、生物・科学のミクロな観点から見ることに共感し、それが素粒子の道へ繋がった。また、当時のウィークボソンの発見に感動したため。

 

伊藤先生

鉄腕アトムなどのアニメに影響され、物心ついたころから科学者になりたいと思っていた。高校生のころは教師から工学部を進められていたが、理学の方が面白いと気付き、反対を押し切って理学部に進んだ。

 

戸本先生

元から理科・サイエンスが好きだった。『アインシュタインロマン』という番組を見て興味を持った。

 

 

...以上です。

 

現在最前線で活躍する研究者である先生方の進路の決め方です。

受験生の皆さんはぜひ参考にしてください!

 

 

 

 高校生・研究現場体験

 

 

 さて、講演会が終わってすぐに、高校生の参加者たちと一緒に現場体験が行われたES総合館へと移動しました。

 

現場体験の内容は、加速器実験・宇宙線観測・素粒子理論の3つのセッションの中から、参加者が事前に選んだ2つを体験するというものです。

僕は素直に<セッション1 加速器実験>、<セッション2 宇宙線観測>の2つを見学させていただきました。

 

 

セッション1 加速器実験

 

セッション1を担当したのは、戸本先生や飯島先生が所属する高エネルギー素粒子物理学研究室(N研)の大学院生の方々です!

 

バーチャルリアリティー(VR)によって、先ほど紹介したLHCの一部であるATLAS検出器の中を覗くVR体験や、実際にスイスのCERN(欧州原子核研究機構)で研究している、N研の大学院博士課程の学生との中継が行われました。

 

VRはATLAS検出器周辺を自由に移動することができ、さらに任意の粒子の衝突のイメージをも見ることができるという、まさに近代的な装置となっていました。さらに、なんとVR内のマシンには実際にCERNで行われている実験のデータがリアルタイムで映し出されているということでした。ハイテクですねぇ...。

 

CERNとの中継では、実際にVRで見られた部屋が映し出されており、日本を離れスイスで研究している学生に様々な質問をすることができました。

 

 

セッション2 宇宙線観測

 

セッション2を担当したのは、基本素粒子研究室(F研)の先生方です!

 

原理はここでは説明しませんが、宇宙から降り注ぐ宇宙線を見ることができる霧箱というものを自作して、宇宙線を観察するという内容でした。

 

実は理学部1年生が受講することができる「地獄の物理学実験」という講義でも、F研の先生の指導の下に今回作ったものと同じ霧箱を自作し、同じように宇宙線を観察する回があります。

 

生徒たちは、ミューオンという宇宙線以外にも、アルファ崩壊をする220ラドンのガスを注入することや、マントルという放射線源を霧箱に近づけることでアルファ線やベータ線を観察し、その飛跡の特徴を考察しました。

 

最後に、原子核乾板という、通った宇宙線の飛跡を記憶する特別な写真乾板を顕微鏡で見ることで、霧箱での考察と同様の考え方で宇宙線を観測できることを学びました。

 

 

ちなみに、このF研の原子核乾板は、宇宙線の透過性を利用して、金庫の透視から火山の内部の構造解析、さらにはピラミッドの内部まで透視することができる優れものです。興味があったら調べてみてはどうでしょう。

 

 

 

 

 ****

 

少しでも「おもしろそう!」と思ったあなた、理学部を受験してはどうでしょう。

特に名古屋大学の理学部に来れば、入学してすぐに今回の講演者である先生方の講義を受けられます。質問もし放題です。どうですか。

 

まずは、2018年11月23日の名古屋大学レクチャ―やオープンキャンパスに訪れてみてはどうでしょうか。

 

 

どうでもいいですが、僕がかつて高校生だったころに落選したサイエンスキャンプというのは、今回のイベントでも紹介されたKEKB加速器の見学などが行われるサイエンスキャンプBelle Plusです。まだ機会がある若い方は応募してみてもいいかもしれません。

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