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河合 優介

工学部化学・生物工学科分子化学工学コース4年生(2017.4現在)
出身地: 愛知県

2017/09/16

名古屋大学レクチャー2017に行ってきました!

皆さんこんにちは!今回は「名古屋大学レクチャー2017」というイベントを取材してきました!

 

「名古屋大学レクチャー」とは、名古屋大学に関わりのある世界的に著名な研究者をお招きし、市民の皆さんの前でご講演頂くことで、市民の皆さんに学問への興味をより持ってもらおうというイベントで、名大のイベントの中でも重要なものの一つです。

今回のイベントは若者に学問へ興味をもってもらうことも目的の一つとしており、会場には大勢の高校生も招待されていました!



「名古屋大学レクチャー」盾贈呈式の様子

 

篠崎一雄 博士

(理化学研究所 環境資源科学研究センターセンター長/名古屋大学 特別教授)

『植物の環境ストレス耐性』

 

はじめに、篠崎博士による、植物が高温や乾燥、塩害などの過酷な環境を生き抜く術についてのご講演がありました。

講演では、篠崎博士の研究成果について分かりやすく解説していただいた他、篠崎博士が研究者を目指されたきっかけなどの紹介もあり、親しみやすい内容となっていました。

 

研究者を目指したきっかけ

篠崎博士が研究者を目指されたのは高校生の時。当時ノーベル賞を受賞された朝永振一郎氏に憧れ、当初は宇宙物理学の研究者を目指していたそうです。

しかし、数学が不得意で大学受験に失敗してしまい、浪人生として勉強に励む中で読んだとある本に感銘を受け、分子生物学という学問に興味を持たれました。

分子生物学とは、生命現象をタンパク質やDNA,RNAなどの核酸といった分子レベルで、つまりは細胞よりも小さなものの視点で解明する学問です。

その後大阪大学理学部を経て、この講演の次にご講演いただいた岡崎博士の研究室がある名古屋大学の大学院へ進学されました。

 

植物のストレス耐性

植物は動物と異なり、自力で移動できないため、乾燥、低温、高温、塩害、水害といった様々な環境ストレスから逃れることができません。

そのため、これらの環境ストレスを巧みに耐え抜く様々な能力が備わっています。

これらの能力のメカニズムを解明できれば、過酷な環境に耐えうる農作物の品種を作り出すことができ、農産物の収量アップや、乾燥地帯や寒さが厳しい地帯など、これまで農業が難しかった地域でも農産物を生産することができるようになります。

 

篠崎博士が研究を始めた1980年代、植物のストレス耐性に関する研究は、植物個体や組織を通じた研究が主流で、それより小さいタンパク質や核酸といった分子や細胞の性質から植物の性質を解明する研究はほとんど進んでいませんでした。

この状況の中、篠崎博士は分子・細胞レベルでの研究を世界に先駆けて行い、特にシロイヌナズナと呼ばれる植物を使った乾燥ストレスに対する植物の遺伝子の働きについて研究されました。

その結果得られた成果は、植物の乾燥耐性のみならず、冷凍耐性や塩耐性の向上にも関わることが判明し、植物の環境ストレス耐性に関する分子生物学的研究に大きな影響を与えました。

 


シロイヌナズナ

 

 

篠崎博士の世界的影響

篠崎博士はさらに研究を進め、植物の環境ストレス耐性の研究成果を次々と生み出し、分子化学生物学にとても大きな影響を与えてきました。さらに、シロイヌナズナ以外にもイネやコムギ、ダイズなどの産業作物にも乾燥耐性を与える研究に対してもその糸口を見出し、加えて遺伝子が管理された実験用植物などの環境資源の整備にも携わりました。

 

篠崎先生は、これまでに約470の論文や総説を発表しており、植物学・動物学分野における論文引用度ではなんと2007年から現在まで世界1位を維持しています。引用度が増えるほどその論文は注目度が高いことを意味しますので、10年間もの間世界中の研究者から論文を引用され続けることは篠崎先生の研究グループが世界的リーダーとして研究を牽引していると言って良いでしょう。



岡崎恒子 博士

(名古屋大学特別教授、名誉教授/藤田保健衛生大学特別名誉教授)

『わたしがたどった研究の道 ―DNAの不連続複製機構からヒト人工染色体まで―』

 

岡崎博士は、世界の生物学の教科書に記載されている「岡崎フラグメント」の発見者であり、分子生物学の発展期の世界的研究者です。また、先ほど紹介した篠崎博士の恩師でもあります。今回のご講演では、岡崎博士の研究成果の他、設備や試薬の供給が十分でなかった当時の実験環境や、夫で共同研究者の岡崎令治博士が亡くなったときのエピソードなどを教えていただきました。



業績

岡崎先生の業績は、「岡崎フラグメント」の発見により、ワトソンとクリックが提唱した「二重らせんモデル」をDNA複製の観点から実証したことです。難しそうな内容ですが、2本の長い鎖がぐるぐると螺旋状に巻かれているDNAの図を見たことがある人は多いでしょう。簡単に説明していきます。

 

「名古屋大学レクチャー2017」資料より

 

二重らせんモデルの鎖は図のように3'→5'のように方向性を持っており、一方の鎖が3'→5'の方向を向いているならば、もう一方の鎖は5'→3'の方向を向いています。

また、二重らせんモデルの鎖は、ほぼ同時に同じ方向に複製されることが分かっています。

よって、これらの条件を満たすには、3'→5'方向にDNAを複製する酵素(DNAを複製する時に必要な物質)と、5'→3'方向にDNAを複製する酵素の2種類が必要になります。

少し話が難しくなってしまいましたが、要約すると理論上は二重らせんモデルを実証するためには2種類の酵素を発見する必要があるということです。

 

しかし、世界中の研究者の実験では、DNAを複製する酵素は5'→3'方向の1種類の酵素しか発見されませんでした。このことは「DNA複製におけるジレンマ」として当時の大きな謎となっていました。



岡崎フラグメント

この謎に対し、岡崎博士は次のような説を唱え、実験によりそれを実証しました。

まず、非常に短い3'→5'方向のDNAの鎖が複製されます。

それらの短い3'→5'方向の鎖が連結することによって、3'→5'方向および5'→3'方向の両方の鎖が複製できるのです。岡崎博士が発見した非常に短いDNAの鎖は「岡崎フラグメント」と命名され、現在では世界中の生物学の教科書に載っています。

 

当時の実験環境と苦労

岡崎博士が研究していた時代は、現在と比較して環境は恵まれたものではありませんでした。雑誌(研究において雑誌とは、研究成果がまとめられた論文が載っている本のことです。自分の研究の参考にしたり、ライバルの動向をうかがったりできるので、研究を行なううえでは欠かせません。)は船便で1カ月遅れのものしか手に入れられなかったり、実験で使う酵素は販売されておらずブタの内臓などから精製しなければならなかったりと、苦労が絶えなかったそうです。さらに、伊勢湾台風により研究設備にダメージを与えられたり、夫で協同研究者であった岡崎令治博士が若くして亡くなったりと、岡崎博士の研究生活は苦労の連続でした。その中でも研究を継続し、素晴らしい業績を上げられた岡崎博士の芯の強さはぜひ見習わせていただきたいと思いました。

 


 

今回は以上のような分子生物学と呼ばれる分野についての講演を取材してきましたが、いかがだったでしょうか。筆者自身も生物は高校1年生の時に少し勉強しただけなので、理解が不十分なところもありましたが、それでもご講演いただいた方々の素晴らしい業績やその人柄に触れられる貴重な機会を得られたことは今後の研究生活において役に立つと思います。

名大レクチャーは1年に1回開催され、事前に応募すれば無料で参加することができるので、世界的研究者の講演を聞きたい人は来年参加してみてください!以上です!

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