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河合 優介

工学部化学・生物工学科分子化学工学コース4年生(2017.4現在)
出身地: 愛知県

2017/02/17

誇張なきアート-科学記録にみる美

寒い日が続きますが、体調は崩されていませんか?

さて、今回は名古屋大学博物館で開催されている企画展『誇張なきアート-科学記録にみる美』を取材してきました!取材を通じて、対極の関係にあると思われがちな「科学」と「芸術」が様々な共通点を持っていて、「科学」の中にも「芸術」的な要素が含まれている事を実感してきました。勉強などの息抜きにぜひお読みください!

 

科学と芸術の共通点

正反対なものであると考えられがちな「科学」と「芸術」ですが、両者は様々な共通点を持っているという主張や、そもそも両者の本質は同じものであるという主張は数多くあります。例えば、分子生物学者の福岡伸一氏は、著書の中で次のように主張しています。

 

「たえまなく移り変わりゆく動的な世界のあり方をなんとかして捉えたい・書き留めたいという希求。そして彼ら(注:フェルメール(画家)、ガリレオ(天文学者)、ニュートン(物理学者)などの17世紀に活躍した人物)はそれぞれの方法で見事な到達をなしとげた。理系と文系が、あるいは芸術と科学が分離してしまう前の、実に豊かな時代に彼らは生きた。」

福岡伸一『芸術と科学のあいだ』 p.7 一部改変

 

筆者はこの文章の中で、芸術と科学は元々世界の有様を表現する」という同じ目的をもって発展してきたと主張しています。このように考えると、科学と芸術は表現する方法は違えど本質的には同じものであるとも言えるのです!それでは、企画展の展示物を通じで、誇張なしに自然を再現した研究記録の芸術性を感じてみましょう!

 

ボルタニカルアート

 

 

まずは企画展で一番目を引いたボルタニカルアートの紹介です。ボルタニカルアート(botanical art)とは、植物図鑑などに用いられる植物の姿を正確に描写した標本画のことです。元々は写真の無い時代に植物図鑑を作るために発展した研究記録としての絵ですが、異国の美しい植物の様子を鮮やかに表現されている点が評価され、19世紀にイギリスやフランスで絵画の一派として大流行しました。確かに、花や果実はもちろん、葉の流線形や葉脈の網目模様や木材の年輪など、植物は多くの魅力的な色や形を持っており、これまで数多くの絵画のモチーフにもなったことから、植物自体が芸術的側面を持っていると言えるでしょう。このことを考えると、植物の姿を正確に模写した絵が、研究記録としてだけでなく芸術としての価値も持つことは納得がいく気がしました。

 

植物の姿を正確に描きとったボルタニカルアートですが、作者によって作風が異なる点も魅力の一つでしょう。例えば、この文章の下の写真のパインアップルの絵はカメの甲羅のような果皮の模様や尖った葉の鋭さがはっきりと描かれています。この絵からは、作者がパインアップルの表面を注意深く観察し、それを直線的な筆遣いで丁寧に描写した様子が伝わってきます。

 

一方、この文書の下の写真絵は果実や葉に当たる光の反射や茎が枝分かれする部分の奥行きが立体的に描かれており、作者が植物全体をマクロな視点で観察し、その植物の全体像を正確にとらえ、少し離れた距離から植物全体の姿を写真に収めたような作品になっています。このように、植物を「正確」に描写すると言っても、植物の葉脈や果皮などの模様や斑点などを細かい部分まで精密に再現することを「正確」と定義するのか、あるいは植物の姿を立体的に捉え、植物全体を俯瞰的に見たときの姿を光の反射や影も含めて再現することを「正確」と定義するのかによってずいぶんと作風が異なり、作者の感性が垣間見える点が面白いなあと思いました。

 

また、会場には江戸~明治期に描かれた魚類や昆虫類の水彩画も展示されていました。これらの作品は平面的で発色が鮮やかな日本画の雰囲気も残しつつ、細密な書き込みにより描かれた生物の種名が分かるほど正確に描かれていました。個人的にこの魚の絵は鮮明な色使いでリアルに描かれているにも関わらず生々しさが全くないというギャップがあってお気に入りです。

 

 

雪の結晶

 

 

さて、皆さんは北極圏やグリーンランドの犬ぞり単独行など数々の冒険で有名な植村直己氏をご存じでしょうか?実は植村氏は一時期研究生として名古屋大学に在籍しており、北極圏から持ち帰った雪や氷、空気中の微粒子の試料解析に取り組んでいました。今回の企画展では、植村氏が冒険の途中で作成した雪の結晶のプレパラートが展示されていました。

雪の結晶のプレパラートは、スライドガラスの上に合成樹脂を塗り、その上に降ってきた雪を受けることによって作成されました。雪の結晶は温度などによって大きく異なる形に成長するため、北極圏で採取した雪の結晶は日本のものとは大きく異なります。今回の展示では顕微鏡を用いて結晶を観察でき、写真でしか見られないようなとても綺麗な雪の結晶が精細に再現されていました。写真がうまく撮れなかったのですが、六方向に均等に広がった直線上に様々な図形が対称的に乗っている様子はまさしく自然が作った芸術作品と言えるもので、テレビやインターネット以外ではめったに触れられない北極圏のロマンを感じることができました!

 

ムラージュなどの医学教材

 

 

続いて、ムラージュなどの医学教材に関する教材の紹介をします。ムラージュとは、水ぼうそうやはしかなど皮膚に症状が現れる疫病に感染してしまった人の手や足などをロウ細工で再現したもので、こちらも写真が無い時代に教材として用いられました。ムラージュは実際の患者から取った石膏型にロウを流し込んで作るため、手や足などに現れた症状が精巧に再現されている点が特徴です。展示されていたムラージュは製造後時間が経過しており多少の変色はあるものの、写真とは違って立体的に再現されているため皮膚のただれなどの症例がとてもリアルに再現されており、疫病の恐ろしさがひしひしと伝わってきて、戦争の様子や人々の悲しみ・苦しみを表現した芸術作品に負けないおぞましさを感じました。

 

その他にも、教材として使われた筋肉や細胞などの人体組織の絵や戦前の外科手術の様子を記録した映像なども展示されており、初めは医学校として開設された名古屋大学の歴史も学ぶことができました。(筆者はこのような展示物を観る事が得意ではないため、しっかりと取材することができませんでした...ごめんなさい。)

 


 

「誇張なきアート-研究記録からみる美」はいかがだったでしょうか。少しでも科学と芸術の共通点を見つけて、科学にも芸術的要素が含まれている事を実感して頂けたら嬉しく思います!元々科学や芸術に興味がある人や、今回の記事で科学や芸術に興味が出てきた方々へ!名大生になれば一部の博物館・美術館が無料で入れちゃいます!大学在学中は自由な時間がたくさんあるので、大学生になったら科学や芸術に触れ、その圧倒的パワーに感動したり、感性を研ぎ澄ます経験をしてみるのはいかがでしょうか。

 

参考ウェブサイト

「ボルタニカルアートとは?」

http://www004.upp.so-net.ne.jp/botanical/Botanic1.html

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