受験生のための名古屋大学発見サイト

名古屋大学ロゴ

アクセスキャンパスマップNU-Cheersスタッフ募集

Blog

渡具知 萌絵

文学部卒業生(2017.4現在)
出身地: 沖縄県

2016/07/31

先進科学塾@名大番外講座「素粒子を見る!」

林先生が講師を務めた、先進科学塾の様子731日(日)に、先進科学塾@名大番外講座/ひらめき☆ときめきサイエンス「素粒子を見る!-ニュートリノ・暗黒物質もみえるかも!?-」に参加しました。普段は目に見えない素粒子の飛跡(飛んだ跡)を観察することを目的として、霧箱の作成や実験が行われました。講師を務めてくださったのは、名古屋大学理学研究科・基本粒子研究室客員研究員の林煕崇先生です。林先生は今回使用した「林式高感度霧箱」の開発者でもあります。この講座は1日目が中学生対象、2日目が高校生対象という日程で行われたのですが、私は20名ほどの高校生たちに交じって、2日目の講座に参加してきました。

 

霧箱の原理 

霧箱とは、素粒子を観測するための道具です。素粒子は世界の根源となる小さな粒子で、私たちの体も素粒子からできています。素粒子を研究するための道具はさまざまなものが考えられていますが、霧箱はその中でも長い歴史を持つ測定器です。

 

ほとんどの物質は、気体、液体、固体とその有り方(相)を変化させます。例えば水は、大気圧下だと0度で凍って固体になり、100度で沸騰して気体になります。一方、蒸発と液化は水面ではいつも起こっており、水分子が空気中へ蒸発する過程が起こるのと同時に、蒸発した水分子が液体に戻る過程が進行しています。

密閉した容器中では、この蒸発と液化の過程が平衡状態になっています。このとき、水面の上の空気中に含まれる水蒸気の量を飽和水蒸気量と言います。(飽和水蒸気量は温度に依存していて、温度が高いほど多くなります。)

 

何らかの原因でこの飽和水蒸気量より多い水蒸気が存在する状態が起こることがあり、これを過飽和状態と呼びます。過飽和状態はきっかけがあると、本来の飽和状態に戻りますが、その際に余分の水蒸気が液化される必要があります。この液化のきっかけは、水蒸気中にになるものがあると起こりやすく、それを凝結核と呼んでいます。凝結核に凝結した水滴が目に見える大きさまで成長すると、霧滴、あるいは雨粒と呼ばれるものになります。

 

エタノール蒸気が過飽和になった状態を利用するのが霧箱です。世界で初めて霧箱を発明したチャールズ・ウイルソン(18691959・イギリス)は、「空気が電気を帯びてイオンになったもの」が、凝結核になることを発見しました。霧箱にX線を当てて空気をイオン化すると、霧の発生が増えることを確かめたのです。(ちなみにイオン化とは、電気的に中性の原子や分子が、電子を失うか得るかしてイオンになることです。電離とも言います。)

 

空気の分子(酸素分子や窒素分子)が電気を帯びる原因となるのは「放射線」です。α線やβ線といった放射線の粒は、1億分の1㎝の原子の、さらに10万分の1以下のとても小さな粒です。その小さな粒は電気を帯びていて、光に近い速さで放射性原子の原子核から飛び出して飛んでいきます。

霧箱の中で放射線が飛ぶと、飛行機雲のような白い雲の筋ができます。その雲の筋を「飛跡」と呼びます。放射線の残す飛跡を観察することで、どんな放射線がどのように飛んだかを知ることができます。

 

 

「林式高感度霧箱」

今回使用する「林式高感度霧箱」は、気体の拡散を利用して静的に過飽和状態を作り出しています。プラスチック容器の中では上面が室温、下面がドライアイスで-50℃以下に冷却されているため、原理的に気体の対流は起こりません。上面近くで蒸発したエタノールは、拡散によってのみ下へ移動していきます。下がるにつれて冷却され、いずれかの場所で過飽和状態が実現されるということになります。この方式の霧箱を拡散霧箱と呼びます。

「林式高感度霧箱」は、自然放射線が見えることが大きな特徴です。霧箱内部に放射線源を入れなくても、身の回りの放射線の飛跡を見ることができます。

          

 

実習の時間は、高感度霧箱を完成させるところから始まりました。参加者たちは1グループ2~4人ずつに分かれ、林先生の説明を聞きながら霧箱の組み立てをしました。

     霧箱を組み立てている様子  霧箱を組み立てている様子その2    

 

霧箱が完成したところで、自然放射線の観察を行いました。飛行機雲様の飛跡が安定して見え始めたら、飛跡の形、長さ、飛来方向、1分間にできる本数などを調べました。

ところで、自然放射線の線源は何であるか、知っていますか?放射性元素から放出されるα線、β線、γ線の飛跡が見える理由は、以下のようになっています。

・α線・・・空気中に漂うラドンガスが霧箱内部に取り込まれ、崩壊して飛跡を作ります。

・β線・・・建物を作っているコンクリートや、壁土に微量に含まれているウランやトリウムなどの放射性元素から放出されたものが見えます。

・γ線・・・荷電粒子ではないので直接は見えませんが、γ線が(霧箱内の分子の)原子からはじき出した電子の飛跡(コンプトン散乱)を見ることができます。

    霧箱の内部を観察している様子      

 

 

放射線の飛跡をより詳しく見るため、霧箱にガスランタンのマントルを近づけてβ線を、注射器でラドンを注入してα線を、それぞれ観察しました。飛跡が濃く、はっきりと見えると「おお~」という歓声が上がり、食い入るように霧箱の中を覗く様子が見受けられました。観察はしながらも、みな片手にスマートフォンやデジカメを持っていて、ベストな飛跡を撮影しようと必死になっていたのが印象的でした。

発表の時間になると、高校生のグループだけでなく保護者のグループも加わって、観察した内容と考察を述べていました。グループによっては飛跡の長さや濃さ、形状だけでなく、崩れ方や消えるまでの時間に注目して発表していて、とても感心しました。

      ラドンを注射して見えたα線の様子

      

 

林先生による説明をもとにまとめると、以下のようになります。

・宇宙線・・・垂直方向、斜め方向、水平方向と、各方向からやって来るまっすぐな細い飛跡(垂直方向では短い距離になる)

・β線・・・①長く細い飛跡で、途中で少し曲がる飛跡

      ②くにゃくにゃ曲がりながら進む、勢いを感じない飛跡(弱いエネルギーのβ線)

・α線・・・濃く鋭いシューっと伸びる短い飛跡(霧箱を横切る長さのものはない)

・γ線・・・直接は見えない。間接的にはγ線が原子からたたき出した電子がエネルギーの弱いβ線のように見える。

 

残念ながら私が参加したのはここまでなのですが、その後は研究室見学がありました。最先端の測定装置がならぶ研究の現場を見ることができたようで、名大の研究を身近に感じる良い機会になったのなら幸いです。

 

先進科学塾@名大では、科学を思いっきり楽しむことができる講座を今後も開催予定です。興味のある方はぜひ一度、ホームページを覗いてみてください!

*「先進科学塾@名大」ホームページ  http://asw.flab.phys.nagoya-u.ac.jp/

31

Jul

2016

Jul 2016
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31