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高橋 基比呂

経済学部4年生(2017.4現在)
出身地: 埼玉県

2015/11/03

講演会「私たちのくらしと宇宙地球環境」に参加しました

11/3に名古屋大学で行われた講演会「私たちのくらしと宇宙地球環境」に参加しました。この講演会は2015年10/1に設立された名古屋大学宇宙地球環境研究所の設立を記念して行われたものです。この研究所は地球・太陽・宇宙を1つのシステムとして捉え、そこに生起する多様な現象の仕組みや相互関係の解明を目的とし、環境問題解決や人類社会の発展に貢献する活動を行っています。具体的な研究内容は地球システムにエネルギーを供給する太陽について内部、表面で起こる現象、太陽から放出されるプラズマと地球の磁気圏、オーロラ、超高層大気の関係についての調査です。加えて、太陽から放出される可視光・紫外線などの電磁波と気候の関係、気候の変動を理解するうえで重要なエアロゾル、それを中心に形成される雲についての研究や雲の発生によっておこる降雨が地上の生態系に与える影響に関する研究、雲の形成と宇宙線の関係についての調査が行われています。

 

講演会は3人の講師の方を招いて行われました。最初に名古屋大学宇宙地球環境研究所の教授である藤井良一先生が「オーロラを通して診る宇宙地球環境」について講演を行いました。講演では太陽と地球の関係、太陽の脅威、太陽と気温について触れられました。知ってのとおり、地球上の生命や自然は太陽の光エネルギーによって支えられています。そうした光エネルギーの中には人間にも有害な紫外線やX線も含まれていますが、こういった電磁波の大部分はオゾン層や電離圏といった地球の大気に吸収されるため、地上には届かず、人間を含む多くの生命が活動することが可能になっています。電磁波に加えて太陽のコロナからは数百万度に達するガス状態のイオンと電子粒子の集合、すなわちプラズマが常に宇宙空間に放出されており、太陽風と呼ばれています。太陽風も電磁波同様、地球方向にも向かってきますが、地球固有の磁場がバリアとなっているため、高温高速の太陽風が地球の近傍に直接侵入するようなことはありません。このように太陽の光や太陽風の脅威を地球の大気と磁場が守っているのですが、太陽から発されるプラズマは間接的に磁場によって守られている領域、すなわち磁気圏に侵入してきています。磁気圏に入ったプラズマは一層高いエネルギーに加速され、太陽の反対側にたまる傾向があります。この熱く高いエネルギーのプラズマが磁力線に沿って地球側に降下し、大気を光らせる現象をオーロラと呼びます。オーロラができる過程やプラズマ粒子の加速等の基礎的な現象や過程はいまだに解明されていません。太陽地球科学はこのような太陽から地球までを一つのシステムと捉え、その間の宇宙空間の構造とダイナミクス、そこで発生するオーロラを始めとする物理過程の総合的理解を目指す学問分野です。この学問は様々な時間スケールの現象が研究対象となっています。例えば、太陽フレアや磁気嵐など短期の変動気象の予測や10年程度の太陽活動度変動や数10年から数世紀に及ぶ太陽放射強度変動、それに伴う気候変動など長期的な「宇宙気候」が研究されています。これらの研究は地球の長期気候変動を解明するのに欠かせません。また、太陽活動の予測や監視は宇宙での安全な人間活動や気象衛星、通信機器の安全な運用になくてはならない存在です。なぜならフレアと呼ばれる太陽面の爆発により、地球上の通信機器や衛星の故障、宇宙飛行士の被曝といったリスクが考えられるからです。こうした現象はデリンジャー現象と呼ばれおり、それが社会的基盤に与える影響は大きいです。

 

次の講演では総合地球環境学研究所の中塚武先生が「過去2千年間の気候変動の歴史から学べること」について講演を行いました。中塚先生は古代の気候の復元方法とその結果が人間に語る教訓について話してくれました。気候の未来は気候システムモデルを用いた数値計算を用いて予測されますが、その信頼度を上げるため太陽活動や温室効果ガス、火山噴火などの適切な条件を与えてモデルの計算能力を検定しようという考え方があります。今回の講演で触れられたのはそうした考えの一環として行われているものであり、樹木年輪や文書、アイスコアを用いて古代の気候を復元する方法です。このなかで気象観測が行われていなかった19世紀以前の気温や降水量を復元するのに最適な指標は樹木年輪です。というのも、樹木の成長は寒冷な地域ほど気温の変化に敏感だからです。そのため、アジアのチベットやモンゴルといった寒冷圏の年輪データから西暦800年以降の広域の夏季平均気温を復元することが可能です。他方で降水量の変化は地域によって様々なので日本を含むアジアの湿潤地域は樹木年輪セルロースの酸素同位体比を用いて降水量の復元が行われています。このような気候システムモデルによって復元された過去2000年間の気温の変化をみると19世紀に到るまですべての地域が長期的な寒冷化状態にあり、20世紀になると南極を除くほとんどの地域が温暖化に転じたことがわかっています。このほかに講演では気候変動と日本の歴史の相関について触れられました。アジアの夏季気温のグラフを参考にすると日本の場合、12世紀~15世紀、つまり中世の時期に気温が大きく変化していることがわかっています。中世といえば、平家滅亡、寛喜の飢饉、鎌倉幕府滅亡、正長の土一揆、応仁の乱など飢饉や戦乱が続いた時代でした。中塚先生の研究では急激な温暖化や寒冷化の直後にそうした社会の激変(=レジーム・シフト)が起きていることがわかっています。研究では弥生時代以降の中部日本における夏季降水量解析も行われており、そうした解析からも数十年周期の大きな降水量の変動に合わせて飢饉や動乱が起きていることがわかっています。人間社会と気候変動の因果関係の研究は現在進行中であり、今後の研究で新しい考え方が得られることが期待されています。

 

最後は国立環境研究所の江守正多先生が講演を行ってくれました。江守先生は「気候変動リスクと人類の選択」について話をしてくれました。現在、世界各国で議論の対象となっている地球温暖化の原因は人間活動にあると考えられています。大気中の二酸化炭素は過去200年程度の間に4割以上増加し、その間に世界平均気温は1度上昇しました。IPCCの報告書によるとこのまま人類が温室効果ガス削減の対策を何も行わない場合、世界平均気温は2050年までに2度、今世紀末までに4度前後上がるとされています。このため、各国は2050年までに世界平均気温の上昇を2度以内に抑えるため、二酸化炭素排出量を減らしていく「低炭素社会」の構築が必要なのです。温暖化の進行は環境に様々な影響をもたらします。例えば、海面上昇、洪水の増加、熱帯低気圧の増加、食糧不足、水不足、生態系の劣化といったものです。環境が悪化すれば、難民や紛争が増える可能性もありますし、気温上昇がある一定の温度を超えるとグリーンランド氷床の不安定化といった問題も生じてきます。一方で地球温暖化は一部の地域に恩恵ももたらしています。寒冷な地域では気温上昇により農業や健康などの面で良い影響を受けており、温暖化で北極海の海氷が減少すれば北極海航路の利用も期待されています。温暖化の対策面では2度以内を目指す大規模な排出量削減プロジェクトには莫大なコストがかかるという考え方があります。具体的には対策技術の開発や技術普及に伴うコストです。さらには原子力発電所建設によって生じる周辺地域の放射能汚染やテロ攻撃の脅威といった技術に伴うリスクも存在します。一方で大規模なプロジェクトには大気汚染の抑制、エネルギー自給率の向上、環境ビジネスなど気候変動抑制以外の利益が得られると考えている人もいます。このように温暖化や温室効果ガス削減計画が社会にもたらす影響は全体として複雑であり、影響がどのような形で現れるかは社会属性によって異なります。仮に温暖化を放置するにしても、温暖化対策をするにしても必ず各々の場合で損をする人と得をする人が出てきます。加えて利害関係の問題だけでなく、温暖化のリスクを押し付けられる生態系や発展途上国、将来世代のことをどう思うかも人によって異なります。こうした複雑な問題に向き合うためにも今後の気候変動関連の国際会議に注意を向ける必要があります。

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