受験生のための名古屋大学発見サイト

名古屋大学ロゴ

アクセスキャンパスマップNU-Cheersスタッフ募集

Blog

河合 優介

工学部化学・生物工学科分子化学工学コース4年生(2017.4現在)
出身地: 愛知県

2016/10/13

ASFサイエンストーク「ロボットになぜ〈弱さ〉が必要なの?」

多くの人にとって、ロボットのイメージは「家事や仕事を独りでにやってくれる便利なもの」や、「人間にできない事を簡単にやってのける頼もしいもの」といったものではないでしょうか。今回はそんな今までのイメージとは反対の、弱くて、頼りなくて、でもちょっとかわいくて、私たちの暮らしを豊かにしてくれる、そんなロボットのお話を聞いてきました!

 

 

岡田美智男先生 プロフィール

1987年 東北大学大学院 情報工学専攻 博士後期課程修了

その後、NTT基礎研究所 情報科学研究部、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)を経て、

2006年 豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 教授

専攻:生態心理学・認知科学

主な著書:『弱いロボット』 医学書院 2012年

 

「強いロボット」の限界

工場で大量の製品を、毎日安定した品質で作り続けるロボット。救助隊が立ち入れない危険な災害現場で、人間に代わって人命救助をするロボット。世界には沢山のロボットが存在しています。これまでに生み出されたロボットの多くは、人間の子供が自分で身の回りの世話が出来るよう教育するように、ロボットが自身の力で与えられた役割を果たすことを目標に改良を重ねられたものです。その結果、ロボットの性能は飛躍的に向上し、近い将来には自動車の自動運転や心理ケアを含めた高齢者の介護など約半分の仕事がロボットで代替可能とまで言われています。

 

しかし、ロボット1つ1つの個体の能力を向上させ続けるだけでは、人間の生活を豊かにし続けるうえで限界があります。性能の良いロボットはそれだけ開発や製造にコストがかかり、高価なものになってしまいます。プログラムに書かれていない事態に遭遇したとたん、不測の事態に対処できないロボットは、ただの金属やプラスチックの塊になってしまいます。臨機応変な対応が出来ないので、予測不能な危険には対処できず、人間を傷つけてしまうかもしれません。さらに、数年前には誰も持っていなかったスマートフォンに対してちょっとした処理能力の遅さに不満を持つように、我々の欲望には限界というものがありません。やみくもにロボットの性能を向上させることばかり考えていては、企業間の過度の競争によって、ロボット開発の寡占化や従業員に対する不当な労働力の搾取が起こる事などによってロボット産業全体が不利益を被ったり、工場から出る廃棄物処理の費用の削減や不用意な買い替えによって発生する大量の使い古しのロボットなどにより環境破壊が起こったりするなど、人間の生活を豊かにするはずのロボットが逆に生活を脅かす可能性さえあるのです。

 

本当の「自立」とは?

ロボットの性能を向上させるだけでは、人間の生活を豊かにするには限界がある...。ロボット開発者はどうすればその性能に頼ることなく生活をより豊かにするロボットを生み出せるのでしょうか。ここでは、「自立」と「依存」の2つのキーワードを基に、我々人間を例にして考えてみましょう

 

以前から、私たちは「自立」とは他人の力を借りずとも自分の力で様々な事を成し遂げる能力の事を指すと考え、自立した人間こそが立派な人間であると考えてきました。他人の答えを見たらカンニング扱いされてしまう、学校のテストが良い例でしょう。しかし、依存先を減らすことが、本当の意味での「自立」と呼べるかは疑問が残ります。皆さんが家から離れた場所に通うことを考えてみましょう。考えらえる交通手段は、徒歩や自転車、バス、電車、自動車、タクシーなどです。ですが、もし雨が降ったら、自転車を運転するのは危険ですし、バスは遅延する可能性が高くなり、電車も混雑します。電車は到着時間は安定していますが、突然運行がストップしてしまうことがあります。タクシーは料金が高く、毎日使うにはかなりの負担になります。となると一番確実な手段は徒歩かと思いきや、徒歩はかなり体力を使う上、到着時間が他の手段に比べて圧倒的に遅くなります。このように、交通手段にはそれぞれに弱点があり、確実に目的地に通うには複数の交通手段を用意しておいた方が無難でしょう。ここで、交通手段を依存先とみなすと、依存先が多いほど自力で目的地にたどり着け、より「自立」しているとみなせるのではないでしょうか。このように、「自立」することを「依存先を増やす」こととみなすことが、今回のテーマである「弱いロボット」を作るという考えの根本となっているのです。

 

「弱いロボット」

では、弱いロボットの一例を紹介します!下の写真の、右側2つのロボットを見てください!

 

ポップなカラーと小さくて親しみのあるフォルムのこのロボット。機能は見た目通りゴミを回収することですが、実はこのロボット、アームやバキュームなどのゴミを回収する装置を備えていないため、自力ではゴミを回収することができません。このロボットはゴミを見つけるとゴミの近くまで移動した後、ゴミを見つめるようにゴミの方へ姿勢を屈め、近くにいる人にゴミを拾ってもらうようにアピールします。その人がゴミを拾って自身のゴミ箱に入れてくれると、ペッコっと礼をするように前屈し、どこかに走り去っていきます。

 

このゴミ箱型ロボットの特徴は、初めから他者の援助を前提にして設計することで、ゴミを回収する機能をそぎ落としていることです。このように必須ではない機能をそぎ落として設計されたデザインのことを「チープデザイン」と言いますが、チープデザインを採用することでコストを削減したり、ロボットの機能をより効果的にすることが出来ます。例えば、「ルンバ」をはじめとするお掃除ロボットは留守中に自動で部屋を掃除してくれる便利なロボットですが、床に散らかった障害物を整理する機能は無いため、ルンバを効果的に使うには常に部屋を整理しておく必要があります。このため、ルンバを使うことで自然と床にモノを置かなくなったり、コードを束ねてルンバが引っかからないようにするようになり、ルンバを使い始めたころよりも整理が行き届いた部屋が出来上がることでしょう。このように、機能が不足していることがかえってそのロボットの目的をより高いレベルで達成することにもなるのです!(もっとも、現時点で床のモノを自動で整理するにはお手伝いさんを雇うしか無いのですが...)

 

さらに、「弱いロボット」には人間と依存し合うことで互いにその価値を認め合う関係になることができます。「弱いロボット」は、人間のから援助を前提としているため、他者とコミュニケーションを取る幸福感を与える事もできます。アメリカの心理学者であるJ.J.Gibsonは「自分を取り囲むものと『一つのシステム』を作りながら、結果として、価値ある事態を生み出しているのではないか」と主張しているように、一人では不完全な存在である私たちと相互的な関係を持つロボットを生みだすことで、そのロボットの使用者に自身の存在意義を再発見させるきっかけを作ることが出来るのです。

 

実用化に向けて

このような弱いロボットは、その特性を生かして実用段階にあるものもいくつか存在します。例えば、教育現場にはオドオドしながら話し、目を見てあげると喜ぶ人間らしいロボットを導入することで、コミュニケーションを取る方法を学ぶロボットが考案されています。さらにそのロボットは子供との会話を通じて少しずつ成長していくので、子供にロボットの世話をさせることでより効果的に子供たちを成長させることができます。「チープデザイン」の考え方で人間の補助を前提とすることにより、価格を下げたロボットやある一つの機能に特化したロボットを作ることもできるでしょう。

 


 

 

「弱いロボット」のお話、いかがだったでしょうか。「強くて、賢くて、自動で何でもしてくれる」という一般的なイメージのロボットも素敵ですが、人間がより豊かな生活を手に入れるには、「弱くて、あまり賢くなく、人間の力が必要で、でもどこか憎めないかわいらしさがある」ロボットの存在も必要なのでしょう。人間にも様々なタイプの人間がいるように、色々なタイプのロボットが人間と一緒に生活している未来もそう遠くないと思うと、なんだかワクワクしてきますね!今回の講演会では、ロボットには工学や情報学のみでなく心理学や社会学などの分野も関わっていることも分かったので、大学に入学したら自分の興味のある分野を勉強して、ロボット開発など様々な分野に関わっていくことを目標にするのも良いでしょう!以上です!

13

Oct

2016

Oct 2016
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31