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佐井裕紀

医学部医学科6年生(2017.4現在)
出身地: 愛知県

2016/04/28

第119回防災アカデミー「日本の命運を握る超高層建築の現状と未来」に行ってきました!

4/28(木)18:00-19:30に減災館1階減災ホールにて開催された第119回防災アカデミーに行ってきましたので、その模様をお伝えします。

 

今回は、株式会社日建設計より執行役員の鳥井信吾氏がおいでになり、「日本の命運を握る超高層建築の現状と未来」というテーマで、地震災害に立ち向かう設計士としての思いを語ってくださいました。今回記事を書くにあたって調べて知ったのですが、ミッドランドスクエア、ルーセントタワー、スパイラルタワーズ、名古屋市科学館、セントレア旅客ターミナルビルなどの設計は日建設計によるものだそうです。身近なものもたくさんあるんですね!

 

地震にも性格がある!

今回の講演の要である、地震応答スペクトルについてご説明します。今回の講演ではこれを人間の性格分析(エゴグラム)に当てはめて話が進められました。 地震と聞くと「震度3」とか「マグニチュード3.0」とかいった表現がニュースでもおなじみですよね。これらは揺れの強さや、地震の規模を表す指標ですが、建物の構造設計においてはこれ以外にも注目すべき指標があるそうです。それが地震応答スペクトルです。

上に出した2つのグラフを地震波の記録だと思ってください。左の青い波と、右の赤い波、どちらの揺れが大きいと思いますか?左のほうが強そう?いや、やっぱり右かな?答えは...同じです。というのも波の振幅が同じだから!ただし、これはあなたが地面に直接立っている場合で、もし、ビルの中にいるとすれば揺れの感じ方が変わってくることもあるそうです。これを説明するための実験が講演中に行われました。

長さの違う振り子が3つ同じ棒についていて棒を手で持っているとき、ほかの2つを動かさずに、振り子に触れずに棒を揺らして1つだけを大きく揺らすにはどうすればよいでしょうか?もし、時間があったら実際にやってみてください!案外簡単にできると思います。糸が長くなるほど、振り子の周期も長くなるので、揺らしてあげるペースもゆっくりにしたほうが振り子も大きく揺れます。これは共振現象を使った実験ですが、地震のときも、これと同じことが建物に対して起こるそうです。

平成7年の阪神淡路大震災は、上の図の青い波のような周期の短い波によるものでした。なので、糸の短い振り子、つまり低い戸建ての建物などが大きく揺れたようです。対して、平成5年の北海道南西沖地震は、上の図の赤い波のような周期の長い波によるものでしたので、高い建物のほうが大きく揺れたと思われます。

この、どの高さの建物を揺らしやすいか、という指標が地震応答スペクトルで、建物の設計の際には、その地域で想定される地震の地震応答スペクトルを見て、構造に求められる強度を計算するそうです。

 

地震に耐えさえすれば良い建物といえるのか?

かつての国の耐震基準は振幅だけに注目したもので、地震応答スペクトルを無視したものでした。高い建物も、低い建物も、一律の揺れの強さに耐えられるように建てられています。基準以上の地震が来れば、揺れに耐えられないのはもちろんですが、基準以下の地震だったとしても、建物の高さによっては、共振により基準以上の揺れが建物内に起こって、やはり揺れには耐えられません。

それらを踏まえ、昨年12月、内閣府は「南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動に関する報告」の中で、過去に起きた同地域の巨大地震が来た場合、どのくらいの揺れの大きさとなるのかという試算を地域ごとの建物の高さごとに出しています。この試算で出された揺れの強さに耐えられる設計がこれからは求められるのです。

ところで、現在の基準で壊れるのなら、基準のほうを一律引き上げて、頑丈な建物を作ればよいのではないか、と思われる方もいるかもしれません。これに対し鳥井さんは「窓のない部屋に住めますか?」という風に投げかけてらっしゃいました。地震に耐えられるような頑丈な建物を建てること自体は可能だと思います。しかし、わたしたちが人間らしく快適な生活を送るうえで、窓などの強度が足りない部分も建物には必要ですよね。また、頑丈な建物を建てるには、たくさんの資材や人的投資が必要になります。地震の際に、すべての建物が強い揺れに耐える必要はなく、建物ごとに想定される揺れに耐えられれば十分なのです。限られた資源を効率よく分配するうえでも地震応答スペクトルの分析は重要なのです。

 

設計士としての社会に対する思い...

耐震基準が変わるということをみなさん知っていたでしょうか?きっと知らなかった人が多いと思います。鳥井さんは講演の中で、「可能ならば総理大臣、でなくても官房長官や国土交通大臣に記者会見を開いて国民に知らしめてほしい」とおっしゃっていました。というのも、わたしたち一人ひとりの備えも地震対策には必要だからだそうです。建物というハード面での耐震も重要なのですが、そこに住む人々というソフト面の備えの2つがそろって、地震に立ち向かうことができます。ただ建物を作るのではなく、設計士としての枠を超えてでも、地震に備える街づくりにかかわりたい、とおっしゃっていましたが、その根底にあるのは次の2つの言葉だそうです。

 
日建設計 構造設計グループ理念

私たちは単なる構造設計者ではなく、構造の得意な設計者である。

(自然に対して謙虚に、主体的に動き、挑戦し喜びを分かち合う。)

→ 私たちは構造設計のみならず建物の設計すべてに責任をもつ設計者です。


佐野利器 (1880-1956 建築家・構造学者) の名言

然しながら、諸君、建築技術は地震現象の説明学ではない。現象理法が明でも不明でも、之に対抗するのが実技である。建築界は、河の清きを待つの余裕を有しない。

 

 おわりに

奇しくも、熊本地震の直後となった当日は、足元が悪いのにもかかわらず、一般の方から専門家まで100人弱の聴衆が減災ホールに詰めかけ、質疑応答も活発に行われました。質問者のなかには日建設計からいらした方も見え、社内での普段のディスカッションの雰囲気も垣間見ることができました。

身の回りでできることから始めていこう、と改めて感じた講演会でした。

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